飛び込んだ先で、真っ先に目に映ったのは恋人だった。
手術台に太い皮ベルトで縫い付けらた姿に、血が熱く、昇っていくのが分かる。
「…お前が、首謀者か」
剣を抜き、構える。
人が、酷く誰かを憎む気持ちが痛いほどに理解できた。
ランも、レイヤードも、かつては持っていた感情。
こんな形で理解することになるとは、夢にも思わなかったことだ。
「動けば、コイツが!」
「その前に、お前の首を飛ばす。どっちが早いか、試してみっか?」
「正気かっ?!」
「ああ。結構、マジだぜ?」
首謀者の男は感じた。
この男の目は、正気じゃない。だが、言っていることは正気だ。
飛ぶのはきっと、自分の首なのだろうと。
「お前には、二つの道がある。一つは俺の剣の錆になるか。もう一つは」
カチリ―と来栖には馴染みのある音が響く。
「瀬那の銃の錆となるか、だ」
右手に愛用の剣。
左手には、もう一つの選択肢である瀬那の銃が握られていた。
この部屋に来る途中で見つけ、持ち主に渡そうと回収していた物。
「これは瀬那の銃だからな、外しはしないし」
その言葉は根拠のハッタリだが。
何故か、外さない自信があった。
言ったとおり、瀬那の物だからか。それとも、撃ち抜く相手が瀬那を捕らえた奴だからか。
「剣でも、銃でも…苦しまずに一発で送ってやるぜ」
握る剣に、銃に、力が篭る。
「こ、このぉ!」
自棄を起こしたのか、勝てると思ったのか、首謀者の男が走り出す。
来栖も同時に走り出し…。
音が、響いた。
続きます