「(クリ、ス…)」

 薄れ行く意識の中、浮かんだのは白い翼の王。
 いや、恋人としての来栖だった。

「(…クリス…)」

 名を呼ぶ。
 もう届かないかもしれない。
 それでも呼び、そして願う。

「(どうか…私を、殺して下さい)」

 自分が自分でなくなり、再開した時。迷わず、敵と見なして欲しいと。
 この手で故郷を、恋人が守ってきた世界を壊すくらいなら…。

「(…どうか…)」

 願う。

「(…私がもう…消えるのですね…)」

 瞼がいよいよ閉じられる。
 その瞬間、この薄れ行く意識もプツリと途切れるだろう。
 自分である、最後の瞬間。
 浮かんだのはやはり、恋人だった。

「(…クリス…アナタに出会えて…私は、幸せでした)」

 幼い頃になくした両親でもなく、恋人が浮かぶのだから。
 幸せだと、消え行く意識に全てを委ねた…。


「セナっ!!」



続きます
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