それから二時間後。
 かつての仲間が集まった。

「水落先生が行方不明と聞きました」
「ああ」
「先輩、もしかしたら大ケガして動けないだけじゃない?」
「そーも思ってよ、現場一帯を捜索させた。結構離れた場所にも行かせたが、情報ゼロだ」
「じゃあ…その黒い翼の一味に捕らわれたと考えるべきでは?」
「けどよ、瀬那攫ってどーする?」
「貴方を陥れる…と考えるべきですね」

 櫂の意見は、どの意見よりも説得力があった。
 そしてどの意見よりも、一番可能性があるもの。
 近衛兵連隊長を捕らえてしまえば、国王の守りが薄くなる可能性がある。
 団体で動く近衛隊を指示する連隊長が居なければ、奇襲を受けた時など総崩れになりかねない。
 瀬那の無事以外に、他にも心配する点が山ほどあった。
 元・近衛連隊長だった紫苑が居たとしても、不安は変わらない。

「逢坂先輩、水落先生…大丈夫だよね?」
「………」

 それは来栖でなくとも答えられない問いだった。
 現場となった場所には何一つ残されて居ない。持ち物も、血の跡も。
 爆発の跡だけが、空しく残されている以外、何も…。
 瀬那の安否に繋がらない。だから答えられない問いになってしまっていた。
 聞いてしまった杏里は、泣きそうな顔で『ごめんなさい』を三回繰り返し、

「…瀬那は、俺が助ける。だから、無事に帰ってくる」

 と言う来栖の言葉で、ようやく元気を取り戻した。
 勿論、翔も櫂も、紫苑も同じ気持ちである。

「先輩、俺、手伝います」
「僕もです」
「あ、僕も僕も僕も」
「クリストファー様」
「わーったよ。みんなで瀬那、探そうぜ」

 来栖は感じた。
 仲間が瀬那を想う気持ちに、『好き』という好意が含まれていることに。
 そして小さな独占欲から、『断ってしまえ』という感情が生まれてしまった。
 が、ここで断ろうとも、誰が何と言おうとも、絶対に手を貸してくれると分かっていた。
 だから、『みんなで』と言ったのだ。

「(瀬那…俺が必ず、迎えに行く。絶対にだ)」

 心に誓い、ギュッと拳を握った。



続きます。
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