迫り来るその時


もしも…。
そう考えると、この不安は色濃くなる。
ルーク、俺を信じてくれるか?


「なあ、ルーク。もしもだ。もしもこの先…」
「この先?」
「…いや、いい。やっぱ止めとくわ」
「何だよ。気になるっつーの」
「そうか?」

今、一つの不安がある。
カースロットという不安。
もしもそれが、俺を支配したら。
もしもそれで、お前に危害を加えたら。
ジェイドなら、迷わず悩まず排除するだろうけど。
ルークなら…どうするかが気になった。
お前を信じた俺を、信じてくれるか?

「まあ、大したことない話さ」
「大したことないなら話せよ」
「うーん…そうだなぁ…

 もしもこの先、俺がカースロットに支配されたら、お前に危害を加えたら…

 お前は、俺を…

 殺せるか?」

鏡に映った俺は、いつもの俺の表情だった。
目の前のルークは、目を見開いて動かない。
そして漸く動いたルークは、

「な、何言ってんだよ! お前を殺すなんて、できるかっ!」

怒った。
ああ、やっぱりお前は優しいな。
優しすぎる。
俺がファブレ公爵を殺したいほど憎んでいるとも知らず…。

「敵に情けをかけてたら、生き残れないぞ?」
「ガイは敵じゃねぇ!」
「…ルーク…」

微かに、カースロットが疼いた。
これは、術者が与える痛みじゃない。
俺が感じた、本当の痛みだ。

「ガイは大切な仲間だ。俺の…大切な…」
「ルーク…悪かった。俺は大丈夫だから、な」

本当は、大丈夫なことなんて存在しなかった。
支配される可能性も、危害を加える可能性も、敵になる可能性も、確実にある。
ただ、今はまだ…、

「大丈夫だから」
「…大丈夫じゃなかったら殴るからな」
「はいはい」

もしもその時が来たら…。
それでもお前は、俺を信じてくれるのか?
俺を、『大切』と言えるか?
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