目覚めを待つ者


「ルーク…」

あれからルークは……目覚めなかった。



ユリアシティ入り口で、ルークとアッシュが戦った。
その時のルークは…『俺は悪くねー』と言うばかりで。
みんなを呆れさせ、幻滅させていた。
アッシュが怒るのも、ルークが負けるのも…当然だろう。
けど、そのせいでなのか、ルークが目覚めない。
今、そばにはティアが居る。
オレは…オレたちは、ただ黙ったまま。

「…行きましょう」
「そうですわね」
「うん…」

オレたちは、アッシュと共に上へ戻ることを選んだ。
そう、ティアに告げた。

「ガイ?」
「…ああ、今…行く」

とは言ったが、身体が動いちゃくれない。
ルークが居る、ティアの部屋の前。
入ることも、去ることも出来ないなんて…。
情けないな。

「いい加減、行くぞ!」
「アッシュ…」

オレの肩を掴み、強引に動かされる。
身体は動いた。
けど、心はまだ動かないまま。

「いつまでもレプリカばかり見てんじゃねー!」

肩を掴む手に、力が込められる。

「アッシュ、何をっ…」

それ以上の言葉は、アッシュに塞がれた。

「ん…」

こいつは本物のルーク…なのに、ルークじゃない。
ルークじゃないと思いながらも、ルークなんだと心の何処かで思っている。
オレの本当のルークは…眠ったままだ。
なのに…アッシュの奥に、ルークを見た気がする。
ルークがここに居る…そんな気がしているから、拒めなかった。

「さっさと行くぞ」
「…アッシュ」
「ここに居ても、何もなりません。今は、私たちが成すべきことをしましょう」
「ジェイド…」

今、すべきこと。
オレがここにいても、ルークが目覚めるとは限らない。
だからオレは、オレの力を必要としている人たちと行く。
ルークが目覚めた時、少しでもいい状況を見せるため。

「ルーク…」

お前が戻ってくるのを、待っている。
オレのルークは、お前だけだ。



「待ちくたびれたぜ」
「ガイ…」

そしてルークは、戻ってきた。 inserted by FC2 system