酒は20歳になってから、だろう。
「まったく、だらしないよね」
「それをキミが言うか?」
俺の隣でそう言ったのは、若干13歳のアニス・タトリン。
その手に酒を持って、だ。
「お酒ってさ、人格変えすぎるよね」
「…キミも変わりすぎだよ、十分にね」
飲む。
更に、飲む。
アニスは将来、酒豪決定、だな。
と言う俺も、結構強かったりする。
まあ、飲んでる酒が弱いと言うのもの、強い理由になるが。
『ヒック…どーせ俺なんか、俺なんか…うあーーー(号泣)』
『あははは、ルークが泣いているわ(大笑)』
『ね〜え、アッシュぅ〜。私との約束、守ってくださいねぇ〜(色目)』
『う〜〜〜〜〜ん(苦)』
ルークは泣き上戸。
ティアは笑い上戸。
ナタリアは何故か色目を使って。
アッシュはとうの昔に潰れている。
普段では絶対にありえないな、キミたちは。
「酒は飲んでも飲まれるなって言うけどさ、飲まれすぎてるよね」
「…キミも多分、飲まれすぎだと思うな」
「あ、空になっちゃった。大佐〜〜、お代わり下さーい」
「まだ飲むのか! アニス、もうお終い、な?」
「ぶーぶー」
お代わりーと掲げたコップを奪い取る。
放って置くと、本当にお代わりして飲みそうだぜ。
ん?
そー言えば、お代わりを注文された大佐は何処に…。
「はれ? 大佐は?」
「さあ? 俺は見ていないし…こいつらが見てるわけない、な」
酔っ払い四人が見てるはずもなく。
『飲みませんか?』
って、俺を誘った当事者だろ!
「もしかしか大佐って、意外と下戸なんじゃ?」
「つまり、飲みすぎたから居ないってか? あの大佐がね〜」
「ほら、歳だし」
「ははっ」
あれ?
そう言えば、思い当たることがない訳じゃ…。
「そう言えばさ、たまにジェイドと飲むんだが、いつもコップ一杯をゆっくり飲んでたな」
「えー、それってそれって」
「いや、ゆっくり飲み交わすって雰囲気だったから、はっきりとは言えないが」
「ゆっくり飲み交わすにしたって、たった一杯でしょ? 絶対下戸だよ〜」
「…なんだろうか」
ジェイドとは静かに飲み交わしてたからな。
で、いつも俺が先に寝てしまって…。
俺が寝たあとに吐いてたってことも…実はありえる話だろうか?
けど、あのジェイドだしな。
あの鬼畜眼鏡が下戸だなんて、
「もし本当なら、私、指差して笑っちゃうかも」
「…キミに笑われたら、流石のジェイドも立ち直れないと思うよ」
「もー、何よー!」
もしそうなら…あれ?
何だ、別に変わらないな。
ジェイドと静かに飲み交わすってのも、結構好きだし。
今日のような悪飲みも、実は結構好きだったりする。
飲まれない程度に、な。
「あー、何だか飲みたくなってきた」
「まだ飲むのかよ」
「何よ。ほら、紳士でしょ? ちゃんとアニスちゃんに付き合って」
「…はいはい」
あ、違う。
さっき酔っ払い四人と思ったが、酔っ払いは…多分、ジェイドも合わせて六人、だった。
「アニスちゃん、今日は飲むわよ〜」
「ホント、ほどほどにしてくれよ?」
こりゃ、明日の出発は無理だな。