055)安息


「おーおー、幸せそうな寝顔だな」
「おや、マヌケなではありませんか」
「ま、まあ…そーゆー言い方もあるよな」

宿屋で男三人。
ルークを真ん中にし、二人が話している。

「何か、安心して寝てるルークを見てるとさ…俺も、安心する気がしてな」

どんな夢を見ているのか、とても安心しきっている顔。
まだ辛いことの方が大きいはずなのだが。
それでも安心しきっているのはきっと、仲間が居るからだろう。

「ルークは癒しキャラですかね」
「いや、何か…ジェイドが言うと、可愛く聞こえないって」
「はっはっは」

こうやって、緊張感の欠片もなく笑えるのも、この寝顔のお陰か。
ふと、ガイは思う。
ルークが魘されている夜は、辛いことばかり思い返していた。
安心しきっている夜は…、自分も熟睡していたな、と。
そして、思う。

「こうやって安心してるってことは、少しでも役になってるんだな」
「何がです?」
「んー? 俺が、俺たちが、ルークを支えられてるんだな〜って」
「私は支えていませんよ?」
「けど、いろいろ助言はしてるよな。突き放してるよーでさ」
「……酷い偏見ですね」
「そうか?」

ガイのように、側に居て、共に乗り越えようとすることも。
ジェイドのように、自ら乗り越える力をつけさせることも。
支え方は人それぞれ。
方法は違っても、たどり着く場所は一緒なのだ。

「…ふぅ。訂正が面倒ですので、そう解釈しても構いません」
「お、ジェイドも丸くなったか?」
「なりませんね」
「可愛くないね〜」

ガイに背を向けて、布団に入る。
照れてはいないが、怒ってもいないだろう様子が伺える。

「俺も寝るわ。おやすみ〜」

誰にでもなく呟き、布団に入る。

「…今日は良い夢が見られそうだぜ」


つかの間の、安息だとしても…。 inserted by FC2 system